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【収益を最大化させるために】賃貸不動産経営の法人化メリットとデメリット、注意点について解説2023.04.12

賃貸経営を個人事業として続けるべきか、それとも法人化し運用するべきなのか、悩まれているオーナー様もいるかと思います。 勿論、法人化にはメリットも多く、個人と比べ税率も大きく変わります。しかし、場合によっては個人で運用した方が、コストメリットが大きくなる場合もあります。 この記事では、個人・法人それぞれのメリットとデメリット、気をつけたい注意点について解説していきます。

1.不動産経営を法人化する7つのメリット

 まず、賃貸経営を個人経営から法人化する上でのメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

・個人と法人の税率差(所得税と法人税)を利用
・所得を複数人に振り分けられる
・法人向けの保険や共済に加入して経費計上
・退職金や福利厚生などの制度を活用
・減価償却の計上で利益を調整
・赤字をより長い期間繰り越し
・相続対策として活用

・個人と法人の税率差(所得税と法人税)を利用

 個人に課せられる所得税は、所得が大きくなるほど税率が高くなる累進課税方式をとっています。累進課税の税率は以下の表1の通りとなっております。
 例えば、サラリーマンとして働きながら、賃貸経営をしているサラリーマンオーナー様の場合、給与所得と不動産所得の合計が課税対象となります。昇給したり、家賃収入が増収となると、支払う所得税も増加します。

 次に法人税です。所得税と同じく累進課税方式をとっていますが、最高税率は個人の税率と比べると、表2からも分かる通りかなり低く設定されています。この差上手く利用することで、節税を目指すことになります。

・所得を複数人に振り分けられる
 個人の場合、本人が稼いだお金はどうしても本人だけの所得になってしまいますが、法人化することで所得を複数人に振り分けることが出来、一人に所得が集中している状態よりも適用される税率を低くすることができます。給与所得を他の会社から受け取っていない人を社員にすれば、個人としての給与所得控除も適用できることから、さらに税額を抑える事ができます。
 さらに、こうして支払った給料は法人の経費にすることが出来るため、課税対象金額を圧縮することが出来ます。

・法人向けの保険や共済に加入して経費計上
 個人の場合、生命保険に加入しても生命保険料控除の枠は年間12万円しか適用できません。しかし、法人契約で被保険者を役員とするタイプの保険に加入すると、保険商品により異なりますが、支払う保険料の半額あるいは全額を経費として計上することができます。
 また、個人にはない共済制度に加入できるのも法人のメリットとなります。掛け金限度の7万円を経費として計上できる小規模共済、全額経費にできるうえに40カ月以上支払えば全額を解約返戻金として手元に戻せる中小企業倒産防止共済などがこれにあたり、利用することが出来ます。
 これを活かして利益を繰り延べて、定期的な大規模修繕の原資に充てるといったことも可能です。

・退職金や福利厚生などの制度を活用
 退職金規定を設定しておくと、役員に対する退職一時金の支払いを経費として計上することが可能となります。受け取った退職一時金は退職所得としてカウントされるため、給与所得や不動産所得などとは合算されず、退職所得控除が用いられるため、手残り金額を増やすことが出来ます。

・減価償却の計上で利益を調整
 減価償却とは、経年によって価値が減少していく資産を購入した場合、耐用年数によって取得費を案分し、経費に計上していく方法です。

 個人事業の場合は強制償却となり、調整等は出来ませんが、法人の場合は経費にする金額を自由に決められる任意償却が基本ですので、調整することで利益の調整ができます。
 赤字を避けるために減価償却費を調整することも出来ますが、金融機関等はしっかりと減価償却がされているか確認することも多く、融資を受ける段階で下手に調整をしてしまうと逆に印象が悪くなってしまう事もあります。調整を実行する際には、税理士等の専門家に相談するなどすると良いでしょう。

・赤字をより長い期間繰り越し
 不動産投資において赤字(欠損金)が生じた場合、翌期以降に繰り越すことができます。

 例えば今期に100万円の赤字、翌期に40万円の黒字となった場合、今期の40万円の所得から前年の欠損金100万円のうち40万円の欠損金を当期の所得から控除することで当期の所得をゼロとし、法人税の支払いを減らすことができます。

 この繰越は個人の場合でも可能ですが、個人だと3年のところ法人だと10年と、長期間にわたって繰り越すことが出来るようになり、節税効果も大きくなります。

・相続対策として活用
 個人から法人に不動産の所有権を移転することで、相続税の対象となる財産が減ります。よって、将来支払う相続税の圧縮につながります。それに加え、妻や子どもを法人の役員や社員にして所得分散することで、相続発生前に資産を移転することが可能になります。

2.不動産経営を法人化する2つの大きなデメリット

次に、大きく以下の2つのデメリットが挙げられます。
・法人設立・維持に費用、労力がかる
・長期保有の場合、売却時の税額が上がる

・法人設立・維持に費用、労力がかる
 法人は設立時に定款の作成と登録免許税を支払う必要があります。定款とは会社の根本規則で、自分で作成することも可能ですが、専門知識が必要で、司法書士等の専門家に頼むのが一般的です。これらの費用は登記まで含めて10万円~20万円かかることもあります。また、登録免許税として最低でも株式会社で15万円、合同会社で6万円の費用がかかります。
 また、維持していく上では必ず法人住民税がかかります。内訳としては、所得に応じて算定される法人都道府県民税均等割と、会社規模に応じて算定される法人市町村税均等割の合計となり、利益がなくても最低7万円が課税されます。

 さらに、個人と比べ法人の確定申告は非常に複雑なことから、基本的には税理士と顧問契約を締結し代行してもらう事になりますが、この報酬もそれなりの金額が発生します。
 その他、給与の支払い等がある場合は源泉徴収税と社会保険料、償却資産申告書の提出、株主総会の実施等、費用だけでなく労力もかかります。

・長期保有の場合、売却時の税額が上がる
 個人の場合、5年以上所有してから売却すると税率は20%となりますが、法人の場合は所有期間に関係なく30%となり、個人に比べ大きく不利になります。尚、所有5年以内に売却する場合、個人の税率は39%となりますので、短期譲渡の場合は法人の方が有利になります。

・給与所得との損益通算ができない
 法人化すると、不動産経営が赤字の場合でも給与所得との損益通算が出来なくなります。
 個人の場合ですと、不動産所得の赤字分を給与所得から差し引くこと(損益通算)によって所得税を軽減出来ますが、法人場合は赤字を個人の給与所得から差し引くことは出来なくなります。

3.注意点について

ここでは、法人化する際の注意点をお伝えしていきます。

・副業と判断される場合がある



サラリーマンなどで会社員をしながら、兼業で不動産投資を行ういわゆるサラリーマン大家様の場合は、注意が必要になります。不動産投資は、法人化することで副業と判断される可能性が高くなります。
副業とみなされた場合、会社により様々ですが、場合によっては就業規則違反として懲戒の対象となる可能性もあります。

特に公務員のオーナー様の場合、法律によって副業が禁止されていますので法人化は避ける必要があります。

・所得の分散には注意が必要


法人の場合、個人の専従者給与よりも支払い金額を多くできるという意見がありますが、法人化して家族で所得を分散する際に認められる給与は年間36万円以上100万円未満が一般的です。
給与の妥当性は給与対象者の賃貸経営の業務量・能力・経験値によって判断され、最高裁の判例では「賃貸経営に不慣れな者に年間100万円の給与を支払うのは妥当ではない」とされています。
妥当性のある給与を支払うようにしましょう。

4.まとめ

不動産投資で法人化することのメリットとデメリットについてご紹介しました。 一般的に不動産投資で法人化することで得られるメリットが大きくなるのは、課税所得が900万円を超えるラインだと言われています。 しかしながら、法人化にはメリットだけでなくデメリットもあり、今後の投資方針によっても人それぞれ法人化に適したタイミングは変わってきます。 個人での判断が難しい場合は専門家に相談の上、慎重に判断することをおすすめします。

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この記事を書いた人

富永 和洋|株式会社和紗 代表取締役
所有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー

上尾市を中心に埼玉で不動産管理事業を行っています。仲介業を行っていないからこそ建物管理の本質であるビルマネジメントにも力を入れており、本当の意味でオーナー様と同じ目線に立ち収益の最大化を実現させます。

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この記事を書いた人

富永 和洋|株式会社和紗 代表取締役
所有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー

上尾市で不動産管理事業を行っています。仲介業を行っていないからこそ建物管理の本質であるビルマネジメントにも力を入れており、本当の意味でオーナー様と同じ目線に立ち収益の最大化を実現させます。

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