目次
1.サブリース解約で得られるメリット
2.サブリースの解約が難しい理由とは
3.サブリース解約に必要な正当事由
4.サブリース解約に伴うリスク・注意点
5.サブリース解約手続きの手順・流れ
6.サブリース解約後に必要な手続き
7.まとめ
サブリース会社が物件を一括借り上げし、入居者に転貸するサブリース契約。空室が発生しても家賃が保証される一方、年数経過とともに設定家賃が減額され、収益が悪化することがほとんどです。
これからサブリースの導入を検討する方も、解約の可否は気になる点だと思います。
サブリース契約は借地借家法の規制を受けるためオーナー側からの解約は難しいものの、解約の正当事由が生じた場合やサブリース会社との合意が得られた場合には解約できます。
そこで今回は、サブリースの解約方法と、解約に伴う注意点について解説します。
1.サブリース解約で得られるメリット
サブリース契約を解約して一般の管理形態へ変更した場合、下記のようなメリットが生まれることが多いです。
収益を最大化できるようになる
サブリース契約の場合、サブリース会社の借り上げ率は80~90%程度が一般的です。
これを一般的な委託管理に変更した場合、 管理会社への委託手数料は平均5%前後に抑えることが可能 です。
サブリース会社が得ていた礼金・更新料もオーナーに入る ようになり有利になります。
また、リフォームや改築等により家賃を上げる際に、オーナーが自由に家賃設定ができるようになる為、物件運営の戦略も立てやすくなります。
これらの戦略によっては、サブリースを利用していたときよりも 大幅に収益を伸ばせる可能性 もあるでしょう。
売却がしやすくなる
サブリース契約の場合、収益が通常の家賃設定の80~90%程度に引き下げられていること、賃料引き下げによる家賃収入減少のリスクがあること、物件の運営についての権限がないことなどのデメリットがあります。
これらの要因に加え、サブリース契約の解除が大変難しいことなどもあり、サブリース付きの物件は投資家から敬遠される傾向にあり売却価格も低くなります。
売却の際には、 サブリース契約を解除した方が、サブリース付きでの売却よりも高く売れる可能性 があります。
ただし、サブリースを解約しても入居者はそのまま引き継ぐため、オーナーチェンジ物件としての売却になります。
契約の巻き直しや現入居者の退去を希望する場合には、別途交渉や立退料が必要 になりますので、注意が必要です。
2.サブリースの解約が難しい理由とは
サブリース契約は、サブリース会社を借主とする賃貸借契約で、これに伴い借地借家法により借主側が大きく保護されます。
この為、原則オーナー都合での解約はできず、解約を相当とするための正当事由が必要です。 尚且つ、契約期間が終了しても基本は自動更新の為、契約期間の満了での契約解除も難しくなります。
一方で、借主であるサブリース会社側には途中解約の権利が法的に認められており、一方的に解約することができます。
従ってサブリース契約は、 オーナーからの解約は困難なのにも関わらず、サブリース会社からは簡単に契約解除できる契約形態 となっているため、借主であるサブリース会社に大きく有利な契約となっているのです。
3.サブリース解約に必要な正当事由
サブリース解約の要件として認められる正当事由例には、以下のようなものがあります。
・自身の居住など、オーナーが建物を使用する必要が生じた場合
・建物の老朽化により建て替えの必要性が生じている場合
・ローン返済が困難で、生計維持のために売却が必要な場合
ただし、正当事由の内容について法律上明確に定められているわけではなく、あくまでもこれまでの判例に基づいたものとなっています。
実際に裁判になった場合、 借主と貸主の状況などを踏まえ、個々の事案ごとに判断されるため、上記のような正当事由であっても、正当事由が認められる場合と認められない場合がある ため、注意が必要です。
一方、サブリース会社の家賃不払いが続く場合などは、債務不履行・契約違反としてオーナーからの一方的な通知で契約解除することが原則可能です。
4.サブリース解約に伴うリスク・注意点
サブリースの解約はメリットばかりではありません。解約に伴うコスト面のリスクが生じる可能性もあります。解約前に正しく把握しておきましょう。
違約金・立退料の発生
サブリース契約の解約条項には、違約金が設定されることがあります。
違約金は賃料の数ヶ月分とされ、サブリース会社によってさまざま です。
さらに、正当事由が認められない場合やサブリース会社が解約に応じない場合、立退料を上乗せして支払わなければならない場合があります。
なお、2020年12月よりサブリース新法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)が施行され、契約時の重要事項説明が義務化されました。
メリットのみを強調し、家賃下落リスクやサブリース会社側からの途中解約の可能性があることなどを適切に説明しないことを禁止する法律です。
契約時にサブリース会社がこうした説明義務を怠ったり、異なる説明を行ったりしたことを理由に解約を求める場合には、立退料の算定においてオーナーに有利となる可能性があります。
隠れていた修繕の発生
サブリース中は、サブリース会社が建物のメンテナンスを行うのが一般的です。
このサブリース会社の管理状況が悪く修繕箇所が放置されていた場合、 新たに計画外の修繕が発生する可能性 があります。
一時的に物件の収益を圧迫する可能性があるため、注意が必要です。
5.サブリース解約手続きの手順・流れ
サブリース契約の解約は、以下のような手続き・流れが必要です。 確認の上、解約手続きの参考にしてみて下さい。
(1)契約書の解約条項を確認する
まず、サブリース契約書の解約条項を確認しましょう。
解約条項が定められている場合、解約申し出の期限や解約に伴う違約金などが記載されていることがあります。
この 解約条項を指針とし解約通知・交渉 を行いましょう。
また、具体的な 解約条項が定められていない場合は、基本的に時間をかけた解約交渉が必要 となります。
この際、借地借家法が大きな指針となるため、理解しておきましょう。
(2)解約をサブリース会社に通知する
サブリース会社に、解約通知を行います。
この際、 必ず書面で解約通知 を行いましょう。
また、解約通知書に規定のフォーマットはありませんが、以下の内容の記載が必要です。
・相手のサブリース会社の名称 ・契約書第〇条に基づく解約通知であること
・対象となる物件
・契約期間
・契約終了予定日
・賃貸人の住所
・氏名
・捺印
・解約通知日
なお、解約通知書は不着などのトラブルを避けるため、 内容証明郵便での送付がお勧め です。
公益社団法人 全日本不動産協会が「貸室賃貸借契約(サブリース)終了についての通知」の雛型を載せています。ぜひ参考にしてください。
(3)解約同意が得られた場合
解約通知書の到着後解約同意が得られた場合、 解約通知書に定められた契約終了期日をもってサブリース契約は終了 となります。
違約金があれば、支払い方法などを打ち合わせ、期日までに支払いましょう。
(4)解約拒否の場合は立ち退き交渉を行う
サブリースの契約書に解約条項がない場合や、サブリース会社が契約解除に応じない場合には、立ち退き交渉を行って契約解除を目指します。
借地借家法や過去の判例の理解が必要になるため、自分で理解するのは勿論、 積極的に弁護士等の専門職にサポートを仰ぎましょう。
6.サブリース解約後に必要な手続き
サブリース解約後に必要な手続き サブリース解約後は、オーナーが建物や入居者の管理を行う必要があります。
解約に伴い必要になる手続きについても理解しておきましょう。
管理会社との契約
サブリースを解約した後、自主管理を行う予定であればそのまま管理業務を引き継げば問題ありません。
管理を委託する場合には、新たに管理会社と契約を結ぶ必要があります。
管理会社の選定・契約を行いましょう。
入居者との賃貸借契約の締結
サブリース契約では、オーナーはサブリース会社と賃貸借契約を、入居者はサブリース会社と賃貸借契約を結んでいます。
一方で、サブリース解約後は契約形態がオーナーと入居者の直接契約に変更となるため、賃貸借契約を結び直すことが必要になります。
この際、 入居者の属性、連帯保証人、家賃滞納の有無、保証会社や火災保険等の加入状況 など、しっかりと把握しておきましょう。
建物の状況を把握する
先述の通り、サブリース会社の管理が杜撰だった場合、隠れた修繕箇所が潜んでいる可能性があります。
修繕の必要箇所がないか、清掃が行き届いているかなどをよく確認し、必要に応じて修繕・クリーニングを実施しましょう。
7.まとめ
サブリースの解約には、借地借家法に基づき原則としてオーナー側に正当事由が求められるため、基本的にはサブリース会社に有利な契約内容となります。
その為、違約金などの費用がかかるケースも多いのが現状です。
少しでも負担を減らすには、 解約条項や借地借家法を理解し、解約を計画的に進めていく必要 があります。
サブリース会社によっては、解約拒否などから解約に手間取るケースも多く見受けられます。 必要に応じて弁護士等、専門職のサポートを仰ぎましょう。
富永 和洋|株式会社和紗 代表取締役
所有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
上尾市を中心に埼玉で不動産管理事業を行っています。仲介業を行っていないからこそ建物管理の本質であるビルマネジメントにも力を入れており、本当の意味でオーナー様と同じ目線に立ち収益の最大化を実現させます。
富永 和洋|株式会社和紗 代表取締役
所有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
上尾市で不動産管理事業を行っています。仲介業を行っていないからこそ建物管理の本質であるビルマネジメントにも力を入れており、本当の意味でオーナー様と同じ目線に立ち収益の最大化を実現させます。