目次
1.大規模修繕工事の12年周期とは誰が決めたのか
2.大規模修繕工事は本当に12年に1度必要なのか
3.大規模修繕工事の実態
4.国交省ガイドラインの真実
5.収益不動産における大規模修繕工事の考え方
6.そもそも必要なのは大規模修繕工事ではなく日常的な修繕
7.大規模修繕工事の適切な実施時期とは
8.まとめ
マンションやオフィス、倉庫など収益不動産を運用されている、これからされるオーナー様にとって、大規模修繕工事は悩みの種になることが非常に多いことかと思います。
適切な費用、修繕範囲、修繕周期などは正解がなく、大まかな基準があるだけ。
しかも、大規模修繕工事の実施には多額の金額がかかることが多く、特に収益の最大化を求めるオーナー様にとっては目の上のたんこぶのような存在になります。
今回は、この大規模修繕工事の必要性について、今回の記事で解説していこうと思います。
1.大規模修繕工事の12年周期とは誰が決めたのか
国交省より出されているガイドラインを要約すると、「規模修繕工事は建物や設備に起因する事故を防止し、建物や設備を適切な状態で運営をするために必要」といったような記載があります。
その中で、修繕工事の目安として「大規模修繕(周期12年程度)」と記載されています。
これが、世間で話題に上がる修繕周期の多くが12年となっている理由です。
2.大規模修繕工事は本当に12年に1度必要なのか
では、本当に建物は12年に1度修繕をしなければ維持ができなくなり、資産価値が落ちてしまうのでしょうか。
結論から申し上げると、12年に1度修繕をしなくても、建物の資産価値を維持したまま運用することは可能です。
12年というのはあくまでも目安であり、立地や施工方法により建物により劣化状況もかなりの差が出ます。
そもそも、
この12年という期間は特に統計的な根拠もなく、大事をとっているだけのただのおおまかな数字
です。
この様な根拠のない数字でも、国交省が作成しているというだけで絶大な信頼性を発揮します。特に、実際に施工する管理会社や建設会社にとって、これほど便利な営業の道具はありません。
だからこそ、世間では「12年に1度の修繕」として実施を推奨しているのです。
3.大規模修繕工事はなぜ高額になるのか
大規模修繕工事、というと多くの人は建物を覆うように足場が組まれ、長期にわたって建物全体を修繕していく姿を想像されるかと思います。実際、大規模修繕工事ではそうした工事を含む場合が多いです。
そして、
大規模修繕工事で最もコストがかかるのは、この足場を組むこと、そして工事後に解体する作業
なのです。
ここにかかるコストが、大規模修繕工事を高額化させる大きな要因です。建物が大規模になるほど、この足場のコストは大きくなります。
足場を組むことにより、ハシゴやベランダからでは届かない外壁等の箇所を修繕することが出来るようになります。
そしてこの足場を利用し、外壁の劣化による雨漏りや外壁タイルの落下、鉄部の防腐塗装、雨が染み込むことによって起こる躯体への損傷を防ぐための修繕が行われます。
しかし、
これらの修繕を12年ごとに実施するべきとされる明確な統計や根拠はなく、20~30年実施しなくても問題
がない場合も多々あります。
4.国交省ガイドラインの真実
この大規模修繕工事のガイドラインは、そもそも「マンション」に向けて作られているものです。
ここでいう「マンション」とは、
分譲形式で権利者が多数おり、大々的に管理組合が結成され、この管理組合が主体で運営されているもの
がほとんどです。
賃貸等の運用を行う収益不動産は、この「マンション」に当たらないことがほとんどです。
つまり、
そもそも収益不動産において、この国交省のガイドラインを当てはめること自体が間違っている
のです。
5.収益不動産における大規模修繕工事の考え方
通常の居住向けの分譲形式の不動産と収益不動産では、決定的な違いがあります。
それは、
「投資かどうか」
といった点です。
投資であるといった前提に立った場合、一番必要な考え方は「費用対効果があるかどうか」になります。
費用対効果が見込めないような大規模修繕工事は、実施しない方が賢明です。
費用対効果が見込める大規模修繕工事とは、大規模修繕工事の実施によって家賃の増額が見込める場合、家賃の下落を抑えられる見込みのある場合、売却時に有利になる場合等々、
投資としてプラスになる場合は実施すべき
だと言えます。
6.そもそも必要なのは大規模修繕工事ではなく日常的な修繕
オーナー様としては、大きな出費の伴う大規模修繕工事はなるべく避けたい工事です。では、どのように建物を維持していけばいいのでしょうか。
答えは単純、
日常的に点検を行い、修繕が必要な箇所が発見されればその都度スポット的に対応すること
です。
大規模修繕工事は行わず、日々必要な箇所に必要な補修を行えば、大規模修繕工事の間隔を延ばすことが出来ます。
また、工事はスポット的な対応のため足場を組む必要もないことから低コストで行うことも可能となり、収益面でも大きく有利となります。
最初から大規模修繕ありきではなく、
日々劣化の診断を行い、現状把握と将来予測を行い、修繕の範囲と時期を定めることが重要
なのです。
株式会社和紗では、上記を特に意識することで、収益の最大化を実現しているのです。
7.大規模修繕工事の適切な実施時期とは
これまで、大規模修繕工事について全体として否定的に記載してきましたが、もちろん全く不要というわけではありません。
出費を恐れるあまり、外壁等の劣化が始まっているのにも関わらず実施を先延ばしにするのは得策とは言えません。
建物の傷みが進みすぎて余計な修繕費用がかかりかねないからです。
大事なのは、
必要な時期に必要な範囲だけの工事を行う事
です。
建物は建設時の施工や環境などの影響で、傷み方がどれも均一というわけではありません。
傷みが少ない建物なのであれば、工事の先送りや修繕範囲を絞ることにより、建物を適切に維持したままコストカットを実現することが出来ます。
では、どうやって工事の実施時期、修繕範囲を決めるのでしょうか。
そのためには、
大規模修繕工事前の建物診断が必要
です。
ほとんどの管理会社は、残念ながら未だにしっかりとした建物診断を実施することなく、長期修繕計画で予定されていた大規模修繕工事の時期が到来するという理由だけで、工事を提案し見積書を提示してきます。
管理会社としては、修繕工事が大規模なほど儲けも大きくなることがほとんどです。
事実、管理会社の社員に課せられるノルマとして、大規模修繕工事の発注額が設定
されています。
前述したように、大規模修繕工事はオーナー様としてはなるべく避けるべき工事になります。
黄色のマーカー本文
大規模修繕工事を避けたいオーナー様と、大規模修繕工事を進めたい管理着会社、この双方の利益は、本来矛盾するものなのです。だからこそ、管理会社の大規模修繕工事の内容を鵜呑みにするべきではないのです。
8.まとめ
いかがだったでしょうか。
今回の記事のまとめは以下の通りとなります。
1.大規模修繕工事の適切な間隔とされる12年に1度という数字に特に根拠はない
2.そもそも国交省のガイドラインは分譲マンションに向けたもので、収益不動産に向けたものではない
3.日常的に修繕を行うことで建物の劣化を予防し、大規模修繕工事の実施をできる限り先延ばしにすることで、収益を最大化させる。
4.大規模修繕工事を実施する場合は建物診断を行い、必要な時期に必要な範囲だけの工事を行い、コストを抑える。
物件運用の参考になれば幸いです。
他にも記事は更新しておりますので、よろしければ覗いてみてください。
富永 和洋|株式会社和紗 代表取締役
所有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
上尾市を中心に埼玉で不動産管理事業を行っています。仲介業を行っていないからこそ建物管理の本質であるビルマネジメントにも力を入れており、本当の意味でオーナー様と同じ目線に立ち収益の最大化を実現させます。
富永 和洋|株式会社和紗 代表取締役
所有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
上尾市で不動産管理事業を行っています。仲介業を行っていないからこそ建物管理の本質であるビルマネジメントにも力を入れており、本当の意味でオーナー様と同じ目線に立ち収益の最大化を実現させます。