不動産投資の失敗の定義は「トータルで赤字になること」。つまり「トータルで黒字」になれば成功です。物件売却までを視野にいれた、30年、40年という長期間に及ぶトータルで利益が出たかどうか、プラスになるかどうかで成功か失敗かを判断します。
1.不動産投資失敗の定義
前提として、不動産投資の失敗は「トータルで赤字になること」です。
近年の不動産投資は、バブル期に主流だった土地を購入し売却するときに得られる売却益で儲ける方法ではなく、長期運用し安定した家賃収入を得るための方法が主流となっています。
本記事でも、購入した物件を長期運用する前提で解説します。
まず投資用の不動産物件を購入するために、不動産投資ローンと言われる融資を金融機関で組みます。借入れの返済には、自己資金ではなく入居者からの家賃収入で返済をしていきます。
返済期間は、長いと35年ですが、ローン完済後は家賃収入が利益となります。物件売却までを視野にいれた、30年、40年という長期間に及ぶトータルで利益が出たかどうか、プラスになるかどうかで成功か失敗かを判断します。
注意したいのは、多くの方が「運用中の赤字=投資の失敗」と思い込んでいる点です。
不動産投資でいえば、家賃収入からローンの返済や諸経費を差し引いたキャッシュフローが赤字になっているからといって、失敗とはなりません。たとえ運用中の家賃収入ではほとんど利益が出なくても、それでローン残債が減り、売却時に黒字転換するならば、その投資は成功です。
不動産投資における失敗は以下2つのケースです。
・家賃収入では黒字、売却時にトータルで赤字
・家賃収入も売却時も赤字
なかには、「トータルで赤字でも節税効果があるからよい」という考えの方がいますが、損することを前提にした投資はあり得ません。「儲けてこその投資」という考え方が原則です。
2.不動産投資の失敗事例について
ここでは、実際に不動産投資で失敗してしまう人の特徴について解説していきます。
事例1:空室が埋まらないことに関する事例
「空室が埋まらず、家賃収入が入らなくなった」という失敗事例は多いです。
こういった失敗事例は、利回りの高さだけを見て物件を購入したオーナー様に多い悩みです。
特に、ワンルームマンションなどで空室になると、家賃収入が一切入らなくなってしまうので、運用がままならなくなってしまいます。
利回りが高い物件は特に注意が必要ですが、あらかじめ空室を想定した利回りやキャッシュフローを考えていなければ、空室が発生した際に対応ができません。
大前提として、空室の発生リスクを抑えるためには、賃貸需要が見込める物件選びや入居条件を設定しておく必要があります。
特に利回りが高い物件は立地で不利な場合が多いため、注意が必要です。
事例2:自分で判断せずに管理会社など任せっきりにしてしまったことに関する事例
「管理会社に管理を任せていたら、杜撰な管理で建物の状態が悪化、空室が多くなってしまった」
「不動産会社からの話を全て信じて物件を購入、運用を任せたら実際は入居者が集まらず、当初聞いていたよりも大幅に利回りが下がってしまった」など、任せっきりにしてしまい失敗するケースは多いです。
不動産投資は、自分で判断して責任を持つことが大切です。数千万円もの物件を購入して何十年も運営するため、他の人の意見だけで決めてはいけません。
たとえ失敗したとしても、責任を取るのは自分です。管理会社、不動産会社、友人、知人など、他の人から話を聞くのは良いものの、全てを信用せず、自分で考えて判断するようにしてください。
「◯◯の物件を購入した方が絶対に良い」「△△エリアの物件を購入すべき」「リフォーム内容は◯◯が良い」など、さまざまな意見をもらったとしても、まずはその背景を確認するようにしましょう。
事例3:リスク管理・予測ができなかったことに関する事例
リスク管理・予測ができなかったことが原因で、失敗する不動産投資家は多いです。
・悪質な入居者が入り、家賃を滞納する上に部屋の中を傷だらけにした
・物件を購入して1年足らずで大規模修繕が実施され、多額の費用がかかった
・家賃下落や金利上昇のリスクを考えきれておらず、採算を取るのが難しくなった
・所有物件の周辺に競合物件が増え、想定以上に空室が発生した
不動産投資には、多くのリスクがあるため、対策を考えた上で物件選びや運営を行うことが大切です。リスク管理や予測が甘ければ、そのリスクが発生した際に適切な対応ができず、多額の損失につながる場合があります。不動産投資にどのようなリスクがあるのかについて把握し、多くの失敗事例に触れ、リスク回避の計画や対策を講じれば、成功する確率を上げられます。
事例4:運用目的を忘れて自分に適さない物件を購入してしまったことに関する事例
不動産投資の目的に適さない物件を購入したことで、失敗するケースも多いです。
・老後の年金代わりを目的としていたが、価格が安いという理由だけで購入してしまい、賃貸条件の悪さから空室率が高くなり、失敗した
・10年運用してからの売却を考えていたが、人口減少が続く地域の物件を選び、資産価値が下がり続けていて売却益が期待できない
・年間50万円の利益を目的としていたが、新しい競合物件がいくつもでき、家賃の値下げ合戦が始まり、利益が半分くらいしかない
不動産投資で大事なのは、明確な目的を決め、実現のための計画を立て、実行していくことです。検証や軌道修正をしやすく、成功へ近づくことができます。目的を決めても忘れてしまったり、方向性の違うことをしたりしていては、計画的な運営はできません。目的や計画に合った物件を購入しましょう。
事例5:ローンを組んだ際の返済プランが甘いことに関する事例
ローンを組んだ際の返済プランが甘いことで、失敗するケースも多いです。
・ローンを組んで購入したが、月々の返済額が多く、空室時に返済が滞ってしまった
・借入金額が多く、金利も高いため、総支払い金額が膨らんでしまい、利益を出しにくい状況を生んでしまった
・「なんとか返済できるだろう」と返済期間を短めに組みすぎて、月々の返済額が高く、支出が多くなってしまう
ローンを組む前に、厳しめのシミュレーションを行うことが大切です。見通しの甘い返済プランだとリスクが高いため、気を付けましょう。
3.失敗を回避するためのポイント
リスクを知り備える
投資にはリスクは付き物ですが、不動産投資特有のリスクは時代の流れと密接に結びついています。不動産投資の先行きを考える意味では、次の3つの視点は最低限注意すべきです。それは人口減少問題、空き家問題、インバウンド需要の変化の3点で、今後不動産投資に大きく影響を及ぼすものです。
不動産投資の基本は不動産賃貸業とお話しましたが、貸す部屋や場所があっても借り手がいなければビジネスとしては成り立ちません。人口が減少すれば、当然、借り手も減少します。そうなれば、空き家も増加していきます。現に地方であれ、都心であれ、こうした現象が如実に表れており、それだけ住む家は余っているわけです。
また、コロナ禍で海外からの旅行者が激減している状況はホテルや民泊といったビジネスにとっては大打撃です。不動産投資特有のリスクは世界情勢ともリンクし、常に変化します。経済環境には常にアンテナを張って情報収集をし、リスクに備える必要があります。
目的・目標に見合った物件選定をする
不動産投資を行うにあたって、自分の目的はどういったものを明確に持っておく必要があります。たとえば、不動産投資で稼いでサラリーマンを辞めるというのも1つの目的・目標です。
どのくらいの期間、どの程度の収益が欲しいのか、どういった場所やどういった物件で不動産投資をやるのか、少なくともこの程度の目的は明確にしておくべきでしょう。
コンサルティングの際に、アパートやマンションを建築する土地所有者にお聞きするのは、年間いくら不動産収入が欲しいのか、固定資産税や相続税などの節税をしたいのか、といったことです。
明確な目的があればそれに対する不動産の活用ができます。しかし、目的を曖昧にしたままアパートやマンションを建てると、借金だけ残って不動産投資の効果が得られないという事態も引き起こしかねません。
不動産投資に関する情報更新を続ける
不動産投資には契約ごとに係る法律や税金、ローンなどのファイナンスの情報、建築に関する情報は手に入れておく必要があります。とくに、ファイナンスについての情報は必須で、長期的には不動産の価格に大きく影響を与える場合があるので、注視しておく必要があるでしょう。
いざというときの相談先を担保する
不動産投資はローンや税金といったファイナンスや契約や登記などに係る法律、建物に係る建築関連など、各分野をオーバーラップして成り立っています。自分自身で各分野に精通しているのであればいいのですが、そうはいかないので各分野での専門家と懇意にしておくことが大切です。
賃貸専門の不動産会社や売買専門の不動産会社をはじめ、銀行などの金融機関、税理士や弁護士、あるいは司法書士や建築士といった士業の人ともうまく付き合っておくことです。いざという時の相談相手を確保することは、不動産投資を行うには欠かせません。
4.不動産投資は不労所得ではない
不動産投資とはどういった投資なのかをみてきましたが、その基本はいわゆる大家業、賃貸業なのです。わかりやすく言えば、よく目にする町の地主さんや不動産屋さんと同じと考えるべきでしょう。
大家業は実は大変な仕事で、このあたりを理解していないと不動産投資を始めてすぐに壁にぶち当たるはずです。
大家業は入居者探しや家賃回収、入居者などのクレーム対処、退去の手続きや原状回復作業、税金や契約関係の掌握など、その専門性は非常に高いものとなっています。単に法律やお金の知識だけではなく、入居者や他の不動産会社、税理士、弁護士などの人間関係の構築も必要とされています。
また、不動産投資をする場合には最終的なゴールをどこに見出すか、たとえば、短期で稼ぐのか長期で稼ぐのか、をきちんと決めておくべきです。
加えて、購入物件の見極めは必要で、将来、必ず買値に近い値段で売れる物件を見つけることが必要です。購入物件を見誤ると最終的なゴールにたどり着けないこともあり得る話です。
失敗事例からもわかる通り、自分自身で不動産や投資とはどういったものなのかを勉強せず、不動産会社から言われるがまま物件を買ってしまい、失敗している人が大半です。
不動産投資をやると決めたなら、不動産賃貸業とは何か、投資とは何か、などそれなりの時間をかけて勉強することをおすすめします。そうすることで、自身に不動産と金融のリテラシーが備わり、不動産会社などと対等に話ができるようになるでしょう。
5.まとめ
ここでは、不動産投資の失敗事例5選やデメリット、成功のためのポイントなどについて解説しました。
失敗事例やデメリットを知ることで、不動産投資をしていく中でのリスクを学べるため、対策を講じやすくなります。
また、成功のためのポイントが分かると、不動産投資の成功率を上げることができます。
不動産投資は、金額が大きく運用期間が長いため、しっかり事前準備を行い、計画的に進めることが大切です。これから不動産投資を始める予定の人は、ここで紹介した内容を参考にしてください。
富永 和洋|株式会社和紗 代表取締役
所有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
上尾市を中心に埼玉で不動産管理事業を行っています。仲介業を行っていないからこそ建物管理の本質であるビルマネジメントにも力を入れており、本当の意味でオーナー様と同じ目線に立ち収益の最大化を実現させます。
富永 和洋|株式会社和紗 代表取締役
所有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
上尾市で不動産管理事業を行っています。仲介業を行っていないからこそ建物管理の本質であるビルマネジメントにも力を入れており、本当の意味でオーナー様と同じ目線に立ち収益の最大化を実現させます。